【加工】固体レーザー

概要

レーザーを構成する要素の一つである媒質には、気体、液体、固体のものがあります。このうち、媒質として固体が用いられるレーザーは、総称して「固体レーザー」と呼ばれます。

この媒質には、イットリウム・アルミニウムおよびガーネット(YAG)やイットリウム・バナデート結晶(YVO4)などがあります。

固体レーザーは、単位体積あたりのレーザー出力が大きいという特長があります。そのため、共振器が小型であっても大出力を得ることができ、レーザー光源本体の小型化が可能です。

波長としては、 1 μm 近傍の近赤外領域で発振する Nd:YAG,Yb:YAG,Yb:ガラスファイバーレーザーが多く用いられます。また、波長 800 nm の Ti:sapphireレーザーも有名な固体レーザーです。

一般的に、固体レーザーは、ガスなどの消耗品も少なく、メンテナンス性に優れているため、近年その使用範囲が拡大しています。

固体レーザーの主な種類

Nd:YAG レーザー

イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12)にネオジム(Nd3+)を添加した Nd:YAG 結晶を媒質としたレーザーです。一般的にYAG(ヤグ)レーザーと呼ばれることが多いです。

励起波長は 808 nmに対して、1064 nm で発振します。従来は、フラッシュランプ等で励起していましたが、最近はLD励起レーザーがほとんどです。

用途としては、高出力を活かしてレーザー加工用途が多いです。微細レーザー加工での利用も多く、短パルスレーザーの代表的な媒質となっています。

また、分光計測,プラズマ発生用途などの学術的にも用いられます。

Ti:sapphire レーザー

熱伝導に優れたサファイア(Al2O3)結晶にチタン(Ti3+)をドープした媒質を用いるレーザーです。このTi:sapphire結晶は、広い吸収・発光スペクトルを有することが特長で、波長可変レーザーとして活用されています。

このレーザーの発振波長については、800 nm を中心として 660~1180 nm にわたり連続的に発振が可能となっています。

また、利得帯域が極めて広いという特長があります。このため、レーザー微細加工で注目されるフェムト秒レーザーの励起光として用いられたり、超短時間分解分光、テラヘルツ波発生用途、非線形光学、などに利用されています。

高いピーク出力を得られることが、超短パルスレーザーとして、アブレーション加工での利用につながっています。

波長可変レーザーは、色素レーザーが有名でしたが、近年は、そのメンテナンス性や波長可変性が評価され、多く使われるようになってきました。

参照

気体レーザーと固体レーザー・半導体レーザーの違い | 溶接革命

プラズマ・核融合学会誌Vol.97-05(2021)

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