【加工】光学レンズの材料

概要

光学レンズに求められる条件は用途によってさまざまです。このレンズの性質を決定づける大きな二つの要因は レンズの材質加工方法です。今回はレンズの材質について詳しく掘り下げていきます。

構成

ガラス

ガラス製品は、シリカ(SiO2)が主成分の珪砂(けいしゃ)と呼ばれる砂が主原料ですが、珪砂を熔かすのにはかなりの高温(1,700℃以上)が必要です。そこで、普通はソーダ灰(Na2CO3)を加えて熔ける温度を下げ、さらに水に溶けないガラスにするために成分に石灰(CaO)が加えられます。これが一般的なソーダガラスです。このようにガラスはシリカを主原料にして様々な元素を加えることによって、様々な特性を出すことができます。

光学ガラス

一般的なガラスと光学ガラスの違いは、内部の屈折率のムラの違いにあります。これを脈理といい、ガラスを溶かして固める際に生じた屈折率の不均質な部分です。これをなくすためには純度の高い材料が必要になってきます。また、光学レンズの指標として二つの大切な物があります。それは透明性屈折率です。

透明性

文字通り、ガラスがどれだけ透明なのかを示す指標です。ガラスがなぜ透明といえるかというと、可視光がガラスを通過することができるからです。これは高校の化学で習うアモルファス(非結晶)という性質をガラスが持っているからです。簡単にいうと、物体は大きく分けて結晶物と非結晶物に分けられ、ガラスは製造する際結晶構造がくずれて結晶と結晶境目がなくなり光を通過させることができます。

光学分野ではさまざまな波長が用いられ、例えば殺菌では紫外光、センシングや光通信には近赤外光、サーモカメラ・ナイトビジョンカメラには遠赤外線が用いられます。

光学ガラスが透明であるということは用途に応じた波長で高い透過率を持っているということです。すなわち、光学レンズに求められることは可視光を集めるだけではないので材料の配合の仕方で目的に合った波長の光を集められるようにしています。

屈折率

ガラスの光学特性を示す指標のうち、屈折率は透明性と並んで最も基本的な物性です。

ガラスの屈折率は組成によって決まり、その名の通り光の屈折角を決めるのはもちろんのこと、反射率や透過率も屈折率に依存しています。屈折率は、光とガラスの相互作用を示す最も基本的な特性であり、ガラスの光学的な振る舞いの基本となっています。すなわち光学レンズにとって一番重要な所です。これは材料に大きく依存します。

屈折率の異なるガラス硝材の一番身近な応用例は、カメラレンズユニットですが、最近では、高屈折率ガラスの高い光閉じ込め特性を利用したAR/MRグラス向けの光導波路基板などが商品化されています。

特徴

光学レンズを構成する光学ガラスは高い透明性に特徴があります。 窓ガラスに使われている板ガラスそのものを、正面からみると無色透明に見えるが、横から見ると深い緑色をしているのがわかると思います。実は、これはガラスがかなり光を吸収しているために生じる現象なのです。

光の吸収で写した像が暗くなることが無いように、光学ガラスは透明性が非常に高く作られています。たとえば、BK-7というレンズは、100mmの厚さになっても光の吸収は1.6%しかありません。これはとてつもなく光の吸収が少ないです。

さらに、光学レンズは特定の色の光を吸収することがあってもいけません。すべての色の光、つまり紫外域から赤外域までの色をどれも同じようによく透過させなければ不都合が生じます。なぜなら可視光だけでなく光学レンズは様々な分野で使用されるからです。

歴史

レンズの歴史は、一方では新しいガラス材料の発達の歴史とも言えます。 しかし、光学ガラスの登場にあたって何か新しい組成のガラスが開発されたというわけではなく、上記の既存のガラス組成がそのまま光学ガラスに転用されることになります。

既存のガラスは、石英ガラスに近い光学特性のもの(石英ガラス・ソーダ石灰ガラス・ホウケイ酸)ガラスと、特異な光学特性を持つもの(鉛ガラス)に分かれます。この中で価格と耐久性のバランスの良いホウケイ酸ガラスは代表的な光学ガラスとなりました。

品質が十分な水準に達すると光学ガラスの開発は次のステージを迎えました。フリントガラスの登場です。鉛ガラスの進化系ですが、一般に屈折率は高いが波長依存性を示すアッベ数は低いです。

さいごに

光を利用するすべての精密機器に欠かせないものである光学レンズ。今後もこの分野が発展することで様々な分野に影響を与えることは間違いありません。

参照

レンズの材料について | ケンコー・トキナー

光学ガラスの歴史 (1)|ゴロノンレンズ|note

光学レンズとは – コトバンク

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